No.2 マンションの電気料金削減対策
今回は、近年多くのマンションで取り組んでいると思われる、電気料金削減対策についてまとめてみました。まだ取り組んでいないという管理組合の皆様のご参考になれば幸いです。
【ご注意】
- ここに挙げた節電対策の取り組みは、どちらのマンションにおいても有効という訳ではなく、導入に際してはそれぞれのマンションの実情を踏まえた慎重な検討が必要です。メリット・デメリットをよく見極め、組合員の理解を得た上で、導入実施を判断する必要がありますのでご注意ください。
- これらの情報は、当ホームページ開設者の把握した範囲で掲載しているものですが、実際の活用においては、電力会社等、各関係事業者に各手法の正確な内容確認をしてください。
- 項目1の「東京電力との契約変更による削減」ですが、東京電力では、平成28年4月からの電力小売全面自由化等に合わせ、電気料金プランの見直しを予定しています。このため、ここで紹介した「おまとめプラン」及び「電化上手」は平成28年3月末をもって、新規加入受付が終了となります。詳細は下記、東京電力のホームページをご確認ください。
▼電気料金プランの見直しについて
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2015/1261578_6818.html
▼お選びいただける電気料金メニュー(HP記載事項)
http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/menu/home/index-j.html
1 東京電力との契約変更による削減
(1)低圧高負荷契約(東京電力「おまとめプラン」)
【概要】
- 東京電力が提供している、電灯契約と低圧電力契約を1つにまとめた契約に変更する手法です。
- 動力機器が設置されており、かつ、電灯契約の使用料が多い場合に有効な契約メニューとなっています。特に1ヶ月の電気使用量が1,000kWhの場合にお勧めとされています。
- 契約電力は、電灯又は小型機器※1の基準電力と、動力※2の基準電力の合計値となります。
- 料金は基本料金+電力量料金となります。おまとめプランでは、基本料金は、従量電灯や低圧電力より割高となりますが、電力量料金が従量電灯より割安となっているため、全体で電気料金が安くなる場合がある、という仕組みです。
[参考]料金の違い(H27.10.8時点:東京電力HPより転記、税込:円)
※1 「電灯又は小型機器」:照明や主に単相で使用される電気機器 ※2 「動力」:主に三相で使用される電気機器
【導入条件】
次の点などが、導入における条件となります。
- 低圧電力で、電灯又は小型機器と動力を併せて使用していること。
- 電灯又は小型機器と動力を併せた契約電力が、原則として15kW以上で、かつ、50kW未満であること。
【注意点】
導入に際しては、以下の点に注意が必要となります。
- 電気の使用状況により、電気料金が低減されない場合があるため、検討時点で東京電力に試算を依頼する必要があります。
〈参考・出典〉
東京電力ホームページ: http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/menu/home/home11-j.html
(2)季節別時間帯別電灯契約(東京電力「電化上手」:蓄暖機の設置)
【概要】
- 蓄熱式暖房機(蓄暖機※)等をマンションの共用部分に設置し、東京電力との契約を従量電灯から季節別時間帯別電灯(「電化上手」)へ変更する手法です。
- この契約では、導入する機器により比較的安価な夜間電力を使用し、電気基本料金及び電力量料金の削減をすることが可能です。
- 蓄暖機自体は、ただの暖房器具ですが、契約種別を「電化上手」へ変更するためには、電力会社が設置を条件としているそれらの夜間蓄熱式機器等、負荷移行装置の導入が必要となります。
[蓄暖機]
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- 「電化上手」は季節や時間帯によって異なる電力量料金単価を設定し、昼の時間に使用する電力を、夜間の料金の安い電力の利用に、機器を使って移すことによって電気料金を削減するというもの。 (参考電力料金単価:昼間 約38円/kWh、夜間 約12円/kWh ➢ 約1/3、H27.10時点)
【導入条件】
- 夜間蓄熱式機器等(エコキュート、電気温水器、蓄暖機等)の設置が、契約変更の条件となります。(総容量1kVA以上の夜間蓄熱式機器又はオフピーク蓄熱式電気温水器をの使用が条件)
【注意点】
- 夜間の電灯の使用量が多いマンションでは有効な節電対策となる可能性があります。
- 蓄暖機の設置費用として約30〜40万円の初期費用が必要となります。そのため何年で削減により元が取れるか検討する必要があります。 (業者よっては、初期費用を取らず、年間の削減額でペイバックする方法となっていることもあるようです。)
- マンションの場合、蓄暖機を設置する可能性のある共用部分は管理事務室や集会室などに限られてきますが、暖房機としての活用が見込めない場合は、あくまでも節電契約のための手段と割り切って考える必要があります。
〈参考・出典〉
東京電力ホームページ: http://www.tepco.co.jp/e-rates/individual/menu/home/home01-j.html
(3)主開閉器契約(電子ブレーカーの設置)
【概要】
- 電力会社との契約を「負荷設備契約」から「主開閉器契約」へ変更することにより電気料金を削減する方法です。
- 中小規模のマンションの電力会社との契約は低圧電力で「負荷設備契約」となっていることが多いのではないかと思います。この契約はそのマンションが備えている各設備機器の電流の総容量を算出し、最大の電流が流れた時にブレーカーが落ちるという設定の契約です。
- これはつまり、共用部分の全ての設備を同時に動かしても大丈夫なように設定した契約、ということです。しかし、実際の設備機器の使用においては、全ての機器が同時に動くことは、ほとんど考えられません。
- そのため、電流値を常時正確にデジタルで計測し、プログラムされた電流の量で電気を遮断できるブレーカー(電子ブレーカー)を導入することにより、そのマンションの電気設備の使用実態に即した容量の契約(「主開閉器契約」)に変更することで、電気基本料金の削減に繋がることとなります。
【導入条件】
- 低圧電力で受電しているマンションで導入が可能です。
- マンションの共用部分の動力200V(エレベーター、機械式駐車場、給水ポンプなど)の電気基本料が対象となります。
【注意点】
- 設置費用として約50万円の初期投資が必要となります。削減額による回収見込みの検討が必要です。(1.5~2年位か)
- 業者の信頼性がポイントとなるようです。経済設計になるため、契約電力の見極めがいい加減、動力使用時に電気が落ちてしまうこととなります。また、ネットでは質の悪いブレーカーを販売する詐欺などの情報も掲載されているようですので注意してください。
2 LED照明への交換
【概要】
- 共用部分の電灯照明を、白熱電球、水銀灯、蛍光灯から、発光効率の良いLED照明に交換することにより電気料金を削減することができます。
- 白熱電球等とLED電球の比較は下表のとおりです。(経済産業省資料)
(出典:「LED照明産業を取り巻く現状」2012年11月29日 経済産業省商務情報政策局情報通信機器課 下図も同じ)
- また、LED照明は、下記のように分類することができます。①は器具又は光源の寿命とともに照明器具自体を取り換えるものです。
LED照明器具 ①LED電球(ランプ)が器具と一体となったもの
②LED電球を器具から取り外し交換できるもの
既存の照明器具 ③白熱電球等の既存電球をLED電球に交換したもの
- LED電球と、白熱電球、蛍光灯とのコスト比較は下図のとおりです。(経済産業省資料)
- この表では年間点灯時間2,000時間で年換算していますが、仮に年間全日で12時間照明とすると 365日×12H/日=4,380H/年
- この年間点灯時間だと、『電球型蛍光ランプ』との比較:約3年 → 約1年4ヶ月程度でコストが逆転する計算となります。
【導入における注意点】
- 上で記載したようにLED照明には3種類のタイプがあります。既存の照明器具をLED照明に交換する際には、このうちどのタイプを選択するかの検討が必要です。LED電球の交換時期は約9年に1回。(LED電球の寿命を40,000Hとして上記4,380H/年で割ると、9.1年)照明器具の交換周期は20年程度と考えらえるため、電球(ランプ)を交換できるタイプの器具にした方がよいと思われます。
- 現在の器具を活かして、電球(ランプ)のみLEDに交換するかどうかは、既存器具の設置年数とコストなどを比較して決定するとよいと思います。
- マンションは建築基準法上、「共同住宅」に該当しますが、共同住宅には住戸内(専有部分)を除き、非常用照明設備の設置が義務付けられています。(建築基準法35条、施行令126条の4)
- この非常用照明設備には構造の定めがあり、現在は原則、白熱灯又は蛍光灯を使用することとされており、LED照明については国土交通大臣の認定を受けたものしか使用できません。(同施行令126条の5、S45建設省告示1830号、H22国交省告示242号)
- 共用廊下、階段室の照明器具には逆富士型ランプ露出型などが使用されている場合がありますが、近年はアクリルカバー付き丸型器具が多く使われています。逆富士型を丸型に交換するなどの場合には、照明器具が天井を覆っている部分が異なるため、天井仕上げ面の補修費用が必要となります。
- 既存照明のLED照明への交換も初期投資が必要となりますので、削減額による回収見込みの検討が必要です。上記注意点を踏まえ、選定した照明器具でどの程度削減が見込めるかよく見極めた上で、導入の判断をしましょう。